うねりの誤解
皆さんはうねりの曲線のイメージを綺麗な波型と想像されていませんでしょうか。実はそれは違っていて、入水後に重力を受けながら潜っていくので、入水直後のほうが深く潜る形になります。逆に浮き上がる際には重力に逆らう為浅い角度で体が持ち上がっていきます。理想のうねりは動画後半のようないびつな曲線を描きます。こちらの方が先程よりもラインに沿って体が動いているのがお分かりになると思います。
うねりの比較とテクニック
この動画は下段が理想のうねりで、重力をうまく利用し、勢いよく鋭く入水する事を意識しています。下段は停止位置で指先が斜め下を向いている事が分かると思います。この差を肉眼で捉える事は難しく、他の様々なテクニックについても同様で、細かい解説を行うのはそのためです。
実際のうねりによる差なんですが、一見、変わりないように見えますが、下段の動画のように鋭く入水するうねりの方が若干ですが進んでいる事がわかります。(上段下段共にイルカ飛びから2ストローク目を撮影しているのでスピードの違いはありません。)
1ストロークでこれだけ差があるとは思っていなかったので私自身も驚いているところですが、手のひら1つ分(約20cm)の違いがあり、もし25mで5ストロークするとすると「1m」もの差となるわけです。
一般の方、またスイミングで教わっている子供達の大半が入水時に腕を引きずっていますが、勢いよく入水できないとこのスピードは得られません。また、トップスイマーは 肩の柔らかさがあるのでフラットバタフライでもこの技術を使って推進力を得ています。(尚、腕を引きずるという事は腕を持ち上げようと頑張ってしまうので、腰が反ってしまい負担がかかります。)
これは、私が1000mバタフライを泳ぐ中で感じた伸びの部分で、実際に疲れを感じる時は上段の泳ぎになっています。短水路ではあまり感じた事はないのですが、長水路(50m)プールですと泳ぎの違いが歴然としてわかってくるので、この点に気をつけて泳ぐようにしています。
では、実際にこの推進力の原理は何なのでしょうか。
パイクスタート
皆さんはパイクスタートという技術をご存知でしょうか。以下のアニメーションを見てください。この技術は、通常のスタートよりも高く飛び出し、重力による加速を利用して一気に前に進んで行く技術です。(深く潜るので、平泳ぎとバタフライの選手に多いスタートです。)水の中に入水した後の加速感はスタートの中でも最も速く感じます。だからこそトップスイマーも取り入れる方がいるわけです。(このアニメーションは長く見続けると、気持ち悪くなる場合がありますのでお気をつけください。)
本当に少しの加速なのかもしれません。ですが、その加速によって次のストロークのキャッチが数%程度楽になり、省エネルギーで泳ぎ続ける事が出来るのだと考えています。
ちなみにこれは、現在理想と言われるフラットバタフライとは逆行する技術です。ですが、皆さんがフラットと思われているトップスイマーの泳ぎは確実にこのパイクスタートの原理が入っていると管理人は考えています。動画の比較でも分かるように一見しただけでは分からない技術が隠されています。
トップスイマーと言えども練習中にゆったりと泳ぐ事はあるので、その時には必ず楽に前に進む技術を無意識に使って(習得して)いるはずです。これができなければ厳しい練習に耐える事も難しくなるのではないでしょうか。
この推進力は「1000mバタフライテクニックドリル」でも解説したイルカ飛びで得られます。この時のスピードを繋げる事ができれば最低限度のスピードを維持でき、そのスキルをどんどん上げていく事でスピードを加速して行く事ができます。今回の記事の動画も壁を蹴ってスピードをつけて泳いでいるわけではなくイルカ飛びから2ストローク目を掲載していますので、肩の固い方でも体に負担なくこのテクニックは使えます。次のアニメーションを見てみましょう。
「 うねりの大きいバタフライを推奨する理由(前編)」では、中級者がフラットバタフライを目指すと腰に負担がかかりやすい事は解説しましたが、次のアニメーション左上の「中級者の泳ぎ」ボタンをクリックしてください。このように入水後(1〜6コマ)にストリームラインを作る事で腰への負担が軽くなります。
ストロークを始めるタイミングは、一旦ストリームラインを作る事で体が一直線の状態のまま上半身が理想のバタフライのキャッチの位置と重なります。(左上「理想の泳ぎ」ボタンをクリックしてください。)こちらでも腰への負担が小さくなり、かつ、フィニッシュで体の位置が最高点に達するストロークが可能になります。
また、15コマ目に腕から肩のラインが一直線になっていますが、この直前に斜め上方に進みながら手を広げスカーリングを始めます。そのスカーリングを水面に近づけるように広げていくと、前からの抵抗によって肩入れのストレッチをする動作となり、泳ぎながらにして無理なく肩を柔らかくしていく事が可能になります。(この点については、管理人が実感して掴んだ感覚です。)
うねりの推進力を得られないままフラットバタフライを習得しようとしても「推進力のない、ただうねりのない泳ぎ」になってしまい、余計なエネルギーを使う泳ぎになってしまいます。
であるならば、まずはうねりの大きいバタフライで「入水後の推進力を感じて頂き、水の中で徐々に肩を柔らかくしながら選手のような泳ぎを段階的に目指してもらいたい」というのがSwimming.jpの考えるバタフライ習得方法になります。