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バタフライ Technique

水泳 バタフライ トップスイマーと中級者の泳ぎ方の違い

※最終更新日 2020年11月7日

今回は、バタフライの理想の泳ぎ(トップスイマーの泳ぎ)の3Dアニメーションができましたので、理想の泳ぎと中級者の泳ぎの違いについて解説していきたいと思います。

バタフライ 理想の泳ぎのアニメーションはこちら
https://www.swimming.jp/archives/1746/

管理人がプールで泳いでいる一般の方を長い間見てきて思う事は、なかなか初級、中級を脱して上級者の泳ぎに到達できていない方が多いなという印象を持っています。上級者になるためには何を注意すればいいのか、実際にどのような事が重要なのかを最後の項目でお伝えしたいと考えているので、ぜひ最後までご覧いただければと思います。

体の動き

まず1コマ目ですが、アニメBは上半身が前傾しています。これは、33コマ目からキックを打ち下ろしたと同時に体を水面に押し付け、10コマ目までしっかりと前に伸びながらこの体重移動で推進力を得ています。アニメAは1コマ目で体が水平になっているので体重移動での推進力は全く得られていない事になりますし、浮力が使えないので力だけ体を持ち上げる泳ぎになります。

 

アニメBは体を沈めているため、ストローク後に体が立ち上がるまで時間がかかりますが、アニメAのようにストローク前半(8〜15コマ付近)で体が立ち上がってしまうと、ベクトルは斜め上方を向いてしまい、飛び跳ねるような泳ぎになってしまいます。アニメBのように体重移動で上半身が沈んでいると、水平方向にベクトルが向かいますし、ストロークと浮力を合わせて体を持ち上げられるので呼吸時のエネルギーも節約できます。

体重移動については、「バタフライの進むポイントはストロークと体重移動!」で詳しく解説しています。

アニメBは呼吸を少ない時間(18〜24コマ)で自然におこなえていますが、アニメAは体が起きてからフィニッシュまで時間がかかるのでその間体を持ち上げ続けなければならず(13〜28コマ)、倍以上の時間を呼吸に使ってしまっています。これなら呼吸は楽になりますが、その分体が水中に落ちていき抵抗も大きくなってしまうので、なるべく短い時間で呼吸をおこなう事が理想であるという事がわかると思います。

また、もしアニメAの呼吸を短くしようとすれば、フィニッシュ前に体が水平にもどってしまい、手が遅れて水面に上がってきます。これではかなり肩が柔らかくなければ腕もあがらず、入水も遅れて体重移動ができません。

 

以下のアニメーションは、体の中心線を水色で表したものになりますが、アニメBの線が赤い水平線にまとわり付くように動いています。対してアニメAは1コマ目にフラットになりますが、そこから水中に沈む範囲が大きくなっているのがわかると思います。つまり、アニメBのように泳ぎ全体が水平線に近いのがフラットバタフライであるという事になり、このような泳ぎが上半身のうねりを作り出し、キックまでうねりの力を伝えられる泳ぎという事になります。

うねりについては「トップスイマーのうねりとボディーポジション」にて詳しく解説しています。

 

50mなどのパワー系の種目ではここまで潜らない場合もありますが、基本的にはこの泳ぎができないとスピードが出せないので、練習では短距離トップスイマーでも必ずアニメBのような泳ぎをしていると考えています。(トップスイマーの試合しか見ていない私たちには、スピードが上がれば上がるほど水平に近く見えてしまうわけです。)

管理人が伝えたい事

水泳をおこなっている皆さんを見ていて思うのはある程度泳げるようになった所から、その後のフォームの改善がなかなかできていないという所です。「泳ぎがうまくなりたい」と思うばかりに「泳ぎのフォームばかりを追って」しまい行き詰まってしまっているように思います。

トップスイマーと一般の方の最大の違いはスピードで、選手のようなフォームを作るためにはスピードがないとできないテクニックがあります。「泳ぎが上手い方はスタートが必ず上手い」という事は解説しましたが、スタートのスピードをそのまま泳ぎにつなげていく事が初級、中級を脱して上級者の泳ぎに近づいていくポイントになります。

ただ、この「スピード」について勘違いをされている方が多く、ずっとスピードを上げたまま泳がなければならないという固定観念が皆さんの中に存在しているように感じています。

以前「スタートが上手ければ泳ぎも上手くなる!」で解説させていただきましたが、泳ぎの上手い人は最も速いスピードが出る壁を蹴った速度を維持しようとしながら泳ぎます。ただそれは、スタート後も全力で泳ぎ続けなければならない訳ではありません。

例えば自転車で坂道を下った時にある程度スピードが出て平坦な道に入ったとします。そこから皆さんは全力で自転車を漕ぎますでしょうか?その速度を持続できればいいので、ペダルは軽く回す程度しか力を入れないと思います。

そのように1掻き目から全力で後ろに掻くのではなく、スピードがなるべく落ちない一番楽に進むおいしい場所を探します。それを1ストローク目でできれば、2ストローク、3ストローク目と同じ感覚でそのまま泳ぎ続ける事ができるので、余計なエネルギーを使わずにストロークする感覚が身につき、スピードを維持できるようになっていくはずです。

始めは25mを維持するのも難しいかもしれませんので、しっかりと休憩を取ってフォームが崩れないように1ストロークずつ距離を伸ばしていきましょう。

いきなり選手のような泳ぎはできない!

管理人はコロナの影響下で2020年現在あまり泳げていませんが、400m個人メドレーを逆順(クロール→平泳ぎ→背泳ぎ→バタフライ)で長い時には4000m以上続けて泳きます。ただ、長距離を泳ごうと思い始めた2016年当時は400mを10回練習するとしても、1分程度休みを入れて泳いでいました。

それは、当時平泳ぎやバタフライをすると「腕の疲労」によって徐々に腰が上がらなくなってくるからで、しっかり休まなければ「いいフォームを続けられない」からでした。

気を抜くと腰が落ちて体重移動ができず、前に進む距離が短くなってしまう事が分かっているので、それから1年間程腰を高く持ち上げる事を意識し続けた事で、徐々にスピードを落とさずに楽にできるストロークの軌跡が身に付き、筋力もついて行った事で何千メートル泳いでも腕も張らなくなりましたし、腰が落ちる事もなくなりました。

週1回程度の練習だったのでこれだけかかったのかもしれませんが、選手としての経験もあり、ある程度積み重ねる練習に慣れているので1年で習得できたとも言えるので、やはりある程度の時間はかかります。

本来、このように1つの課題を意識しなくてもできるようになってから次のフォーム練習に移ると効率良くフォーム改善ができるのですが、逆に何年も泳ぎに進歩がなく、タイムが伸びないという方は、自分に合ったドリル練習ができていなかったり、元のフォームに戻ってしまっている可能性があるので、改善点を再確認する必要があるでしょう。

頑張り過ぎも頑張らなさ過ぎもよくない

管理人は2016年から主におこなう運動をランからスイムにシフトしてから腰痛がなくなり「ランのように長く泳ぎたい」と思うようになりました。始めのうちは長い距離なので、ゆっくり泳いでも多少息切れをしましたし、練習の最後にはストロークで腕が棒になりフィニッシュを押せないような状態でした。

ただ、それでも合計4000m泳いで疲れが残らない程度ですので、例えばみなさんであれば1000〜2000m程度から練習を始められるといいのではないかと思います。強度的には「息切れは少ない」けれども「最後には筋肉が張ってしっかりストロークができなくなる」程度、つまりしっかり休んである程度スピードを上げて泳ぎます。距離は始めは短くてもかまいませんが、体幹をしっかり意識して腰が落ちないようになるべく水面に近い場所を泳ぐように気を付けましょう。

楽に腰が高い位置で維持できるようになったら、少しずつ練習距離を長くして行っていただければと思います。

管理人の2016年からの練習日記はこちらからご覧いただけますので、参考にしてください。
https://www.swimming.jp/coach/diary/?l=388

Youtubeでも解説させていただいております。