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クロール Technique

クロール 最も効率的な肩の動きでストロークを長くする

※最終更新日 2021年6月26日

最も効率的な肩の動きということで、以前の記事で「肩を大きく回す事が重要」である事を解説しましたが、理想の大きい肩の動かし方の2点を詳細解説していきたいと思います。

1つは、入水直前から直後に前に伸ばしていく肩の動きと、もう1つは腕が最も前に伸びた後に気をつけたい部分についての解説です。「より綺麗に泳ぎたい」「よりタイムを上げたい」方向きの内容になりますが、初級者の方も将来的にはこの動きを目標にして頂きたいので、皆さんにご覧頂きたい内容です。

最後に初級・中級者の方への注意点も掲載させて頂きましたので、最後までご覧いただければと思います。

最も腕が伸びやすい肩の動き

ストロークは、前後に伸ばした手が最も開くと水を掻く距離が長くなるので効率的な訳ですが、ただ伸ばすのではなく、伸びやすい方法があります。

例えば、高い所にあるものを取ろうとした時にギリギリ届かなかったとします。その時皆さんはどういう動きをするでしょうか。初めのうちは、その取りたいものを見ながら取ろうとすると思いますが、最後には顎を引いて手を伸ばすと思います。その方が腕が遠くに伸びることを私たちは知っているのでそういう動きをします。

以下のアニメーション左側を見て頂きたいのですが(「もう一度見る」をクリックして下さい)、高い所にある物を顎を引いて取った時がご自身の腕が最も伸びている姿勢になります。この姿勢を水中でする事ができれば、最も遠くの水を掴む事が可能になります。

ロンドンオリンピック100m自由形金メダリストのネイサンエイドリアン(5コース)の泳ぎを以下の動画で見てもらいたいのですが(2分15秒付近)、ラスト10mをノーブレス(無呼吸)で泳いでいます。

この時、頭が完全に水没していますが、ラスト数mはいくら金メダリストでも腕は疲れて前に出にくくなります。腕が前に出ない分、肩をできるだけ前方に出そうと頑張ります。先程の高い場所の物を取る時、耳の後ろで肩を持ち上げるような感覚を持ちませんでしたでしょうか。この「肩を持ち上げる感覚」をラスト数mでできれば、他の選手よりも遠くの水を掴む事が可能になります。(もちろんオリンピックに出るような選手であれば、この感覚は誰もが持っていると思いますが。)

 

また、ラスト数mは腰も落ちやすくそれが抵抗になってしまいます。オリンピアンでもラストで腰が沈みやすいので頭を下げて腰を上げるような泳ぎをします。実際にこの姿勢を水中でおこなった場合には、アニメーションAのようなイメージを持って泳いだとしても、重力によって腰が沈むのでアニメーションBのような泳ぎになってしまいます。ラスト10mでこのような泳ぎをする選手は多いので、競泳のテレビ中継などがありましたら、注意してご覧いただければと思います。

一般の方も疲れてくれば腰が沈むので、この姿勢を保つ意識は重要です。よく、水泳の解説で骨盤後傾が大切であるとの話が出ると思いますが、その理由がこれで、アゴを引いて背伸びをする簡単なイメージで習得できます。

2009年頃に世界記録が立て続けに出た時期、レーザーレーサーなどの高速水着が有名になりましたが「水着で体幹をホールドする事で腰が落ちないようにしていた」のであれだけの記録が出た訳です。高速水着が禁止になってしまった時、水着に頼っていた選手のタイムが急激に落ちてしまった事で、この腰の位置(ボディーポジション)が大きな差となっていたことを浮き彫りにしました。

最も腕が伸びた後の肩の動き

最も腕が伸びた後、そこからストロークが始まる訳ですが、人間の体というのは腕を前に伸ばすとその反動で元に戻ろうとするので、ストロークと同時に肩が後方に戻りやすくなります。そこで、ただ腕を前に伸ばす事を意識するのではなく、できるだけ肩を大きく回して前方に肩が出ている時間を長くする意識を持つことが大切です。

以下のアニメーションは中級者で2軸クロールをマスターしようとした時に体が浮かずに抵抗が逆に大きくなってしまっている泳ぎ(アニメーションA)と大きい肩回し(ローリング)を意識している1軸ローリングの方(アニメーションB)になります。

ローリングは1軸から!

18コマ目でアニメーションを止めていただくとわかると思いますが、アニメーションBよりもアニメーションAの左肘が既に後方に動いているのがわかると思います。「アニメを重ねる」ボタンをクリックしていただくと、ストロークの大きさの違いがハッキリとわかりますが、この差によって1ストロークで5cm推進力を失っているとすると、50mで40ストロークすると2mもの差がついてしまいます。

以前の解説で(力の入れ方・使い方)最も効率的なストロークは、水を動かさず(手の位置はそのままで)体が前に出て行くのが理想である事を解説しましたが、入水後にストロークと共に肩が後ろに動いてしまうアニメーションAはその時点で水を後ろに動かしている事になるので非効率ということになります。

肩を前方に維持するメリットは他にもあり、リカバリー側の肩が前後に伸びて維持している時間が長いので、前からの抵抗が小さくなります。

高い所の物を取る時に感じた肩を持ち上げる感覚と腕をしっかり伸ばす意識ができていれば、疲労が蓄積していった時でもスタート直後のストローク長を維持し、抵抗も少なくなりますので、そのような泳ぎを目指していきましょう!

初級・中級者の方への注意点

初級者の方がプールでスピードを上げて泳いでいるのをよく見かけますが、その時のストロークは非常に短く見えます。特に選手経験がある人間から見ると「あと50cmは手を前後に伸ばせるのではないか?」と思う事が多いです。以下のアニメーションAのように腕に力が入り過ぎていて、腕の形がほとんど変わる事なく動いています。

初級者にハイエルボーを教える前に、まず手を伸ばして大きくストロークするように指導するのは、このアニメーションAのようになって欲しくない為であるのですが、レベルが上がりハイエルボーの練習に移行しても真っ直ぐ伸ばす意識をし続けなければ、このような泳ぎになってしまいます。

これも水泳あるあるで、「あと50cm伸ばせる」方から「もう5cm伸ばせる」という方まで差はありますが、泳いでいる方の90%は理想の場所まで伸ばすことができていないので、大きく肩を回す意識をしっかり持ち続けられるようにして行きましょう!

Youtubeでも解説させていただいております。